以下の研究発表会が開催されました。
日時:2023年7月16日(日)14時30分から17時10分
会場:ZOOMによるオンライン開催
[プログラム]
14時30分 開会
14時40分~15時10分 発表1
発表者:児玉麻美(奈良女子大学)
題目:ユーモラスな二重悲劇──歴史劇『ハンニバル』とグラッベの演劇論について
司会者:吉田耕太郎(大阪大学)
要旨:
劇作家グラッベはドイツの劇場における俳優や観客、演出、レパートリー等に関する諸問題を様々な角度から分析し、論文『シェイクスピア・マニアについて』(1827年)および劇評集『デトモルトとその劇場について』(1827-29年)で読者たちに広く議論を呼びかけた。ここで提示された問題意識は、後期の劇評集『デュッセルドルフの劇場について』(1835年)の中でさらに深化させられる。彼は「悲壮な悲劇」からは一定の距離を取り、軽やかさと凄惨さを備えた「ユーモラスな二重悲劇」を生み出そうという着想へと至るが、従来のグラッベ研究ではこうした演劇理論の展開については十分に論究がなされてこなかった。本発表においては、グラッベの晩年における演劇論の実践例である歴史劇『ハンニバル』(1835年)を取り上げ、ここに描かれる裏切りや残忍さ、グロテスクなものの要素が、彼の「崇高な笑い」の理想と密接に結びついたものであったことを明らかにする。
15時10分~15時40分 発表2
発表者:信國萌(大阪公立大学)
題目:ドイツ語形容詞と、形容詞が項に取る事象について
司会者:吉村淳一(滋賀県立大学)要旨:
ドイツ語の形容詞は、典型的には付加語的および述語的に用いられ、名詞が表示する対象の性質を表す。形容詞が性質を表す対象、すなわち名詞が表示する対象としてはまず、ein kleines KindのKindのような人ないしein rotes HausのHausのような物が考えられるが、eine schnelle FahrtのFahrtのように事象もありうる。本発表では特に事象を項に取るドイツ語形容詞に着目し、形容詞と事象を表す語句の間にありうる統語的・意味的関係を、Vendler (1968) を踏まえて整理する。なお、人や物は典型的には名詞で表されるが、事象は典型的にはむしろ動詞で表される。Leiss (2000) などにより、ドイツ語では、名詞の有界性による対立(可算/質量)と動詞の有界性による対立(達成・到達相/状態・活動相)が並行して捉えられることが指摘されている。名詞の有界性による対立が、形容詞が名詞を修飾ないし叙述する際の名詞の選択や意味解釈の決定に寄与するように、動詞の有界性による対立も、形容詞の名詞選択や意味解釈の決定に影響を及ぼしうることを論じる。
休憩 約20分
16時~17時
Helmut J. Schneider教授(ボン大学名誉教授)講演会
司会者:柏木貴久子(関西大学)
講演言語:ドイツ語講演要旨
AUFBRUCH INS FREIE
ZUR POETISCHEN LANDSCHAFTSERFAHRUNG ZWISCHEN EUROPÄISCHER AUFKLÄRUNG UND ROMANTIK
Landschaft, also die bildhafte Wahrnehmung der äußeren Natur, ist ein genuin neuzeitliches Phänomen, dessen Ursprung in der europäischen Renaissance und der Aufklärung liegt. Insbesondere seit dem frühen 18. Jahrhundert bürgert sich der Gang hinaus ‚ins Freie’ als eine Art symbolische Handlung ein, in der sich die Überschreitung des Gewohnten mit der Emanzipation von den traditionellen Bindungen des ständischen – ‚stehenden’ – Menschen verbindet. Ausgehend von diesem aufklärerischen Ursprung, wird der Vortrag den Befreiungs- und Aufbruchscharakter der landschaftlichen Wahrnehmung betonen, der sich in der Romantik zur Selbstbewegung der autonomen Einbildungskraft steigert. „Landschaft“ ist nicht nur der Raum, in dem wir uns ästhetisch oder nostalgisch von dem Unbehagen in der Zivilisation erholen. Im Gehen und Sehen in der Natur vergewissert sich das moderne, mobile Individuum seiner Freiheit.
Als zentrale Autoren werden Addison, Rousseau, Goethe (Werther und Faust), Schiller und Hölderlin angesprochen; mit Caspar David Friedrich und Gustave Courbet wird die bildende Kunst einbezogen.
17時10分 閉会
[本部からのお知らせ]
◎次回研究発表会のお知らせ 第242回研究発表会は、2023年12月9 日(土)近畿大学にて開催予定です。発表を希望される方は、以下の要領にてお申し込みください。
・申込事項:発表題目、発表要旨(400字程度)、発表者の所属等、使用機器の有無を記入したものを添付してメールで申し込む。
・申込先:件名を「個人研究発表申込」としてEメールhanshin[at]jgg.jpで申し込む。(※Eメールをご使用でない方は、「個人研究発表申込」と朱書きして学会事務局まで郵送。)
・申込締切:2023年10月10日(火)(必着)
*メールアドレスhanshin[at]jgg.jpの[at]は@に換えてご使用ください。
◎会費納入に関するお詫びとお知らせ
会員のみなさまに先日お送りした第241回研究発表会案内には振込用紙を封入しておりませんでした。振込用紙は次回研究発表会のお知らせとともに11月に送付いたします。それ以前に会費をお支払いいただける場合は、第241回研究発表会案内に記載されているゆうちょ銀行口座にお振込みください。お手数をお掛けしますが、どうぞよろしくお願いいたします。